中性代名詞 en の見分け方・使い方を徹底解説!

文法

今回はフランス語学習における最初の(?)強敵、中性代名詞 en について解説します!

たいていの場合は「そのことを」とか「それについて」と理解しておけば大丈夫ですが、授業やテストでは狙われるポイントになりやすいので注意が必要です。

この記事では中性代名詞 en を使った例文や実際の文学作品、ニュース記事からの引用をたくさん掲載していますので、en について詳しく知りたい方はぜひご覧ください!

en の見分け方:直後の品詞をチェック

中性代名詞en について検討する前に、その en が本当に中性代名詞なのか把握する必要があります。

※下のボタンからすぐに中性代名詞 en の解説に飛べます!

チェックすべきはen の後ろに来る品詞です。具体的には(冠詞+)名詞動詞現在分詞のどれが来ているかによってen の役割も決まります。

3つの en 1. en (冠詞) 名詞 → 前置詞 2. en 動詞 → 中性代名詞 3. en 現在分詞 → ジェロンディフ

重要なことは中性代名詞の en は必ず動詞の前にあるということです。

ただし動詞にはさまざまな派生形があり、中にはややこしいものもあるので少し例文を見てみましょう。

Il est dangereux d’en sortir. そこから離れるのは危険だ。

これは動詞の原形(不定詞)についているので、そのまま中性代名詞となります。en の前にある d’ は不定詞について「~すること」を表します。

Elle s’est en allée sans rien dire. 
彼女は何も言わずに行ってしまった。

Il est en allée et venue depuis un moment. 
彼はさっきから行ったり来たりしている。

上の例文は過去分詞についているのでこれも中性代名詞です。一般に en は助動詞(ここではêtre)の前に置かれますが、口語では上記のような語順もあります。

下の文も過去分詞についているように見えますが、これは allée et venue (往来)という名詞句なので、この en は前置詞ということになります。

Il y avait beaucoup de gens en parlant. 
それについて話していた人はたくさんいた。

Elle riait en en parlant. 
彼女はその話をしながら笑っていた。

最初の文は現在分詞についているのでジェロンディフかなと思ってしまいがちですが、その解釈では「話しながらたくさんの人がいた」となり不自然です。よってこちらは中性代名詞と言えます。これは文語的な動詞的形容詞という形で、関係節で置き換えられるのが特徴です。 (= Il y avait beaucoup de gens qui en ont parlé.)

2つ目の文は現在分詞に2つの en がついていますが、1つ目がジェロンディフの en で2つ目が中性代名詞の en です。次のように言い換えていくとわかりやすいかと思います。

 Elle riait en en parlant.

→Elle riait en parlant de cela.

→Elle riait pendant nous avons parlé de cela.

最後に1つ、3種類の en が登場する実際の用例をご紹介します。

En foyer, on est obligé de suivre le groupe sans pouvoir choisir ses activités. Mais on n’aime pas tous la même chose!”, témoigne un enfant cité dans le rapport.
Les mineurs isolés étrangers, …, devraient avoir “accès à des activités extrascolaires ou sportives chaque fois qu’ils en expriment l’envie”.
En accueillant les Jeux olympiques 2024, “la France a fait de la promotion de l’activité physique et sportive une grande cause nationale”.

「児童養護施設では、自分たちの行動を選べず、集団に従うことを強制されます。しかし私たちはみんなが同じものを好きなわけではないのです!」と報告書に引用された子どもは証言している。
身寄りのない外国人未成年者たちは(中略)、「彼らがしたいと言えばいつでも課外活動やスポーツ活動に参加」できるべきである。
2024年オリンピックを開催することで、「フランスは身体活動そしてスポーツ活動の発展を国家の大義とした」

Boursorama, Les loisirs, un droit “essentiel” des enfants, rappelle la Défenseure des droits, 15/11/2023.(参照: 2023/12/04) 訳出・強調・省略は引用者による.

長々と説明を続けてしまいましたが、実際には上の例文のように、紛らわしい形はほとんどないため en の後ろに続く語の品詞に注目すれば簡単に見分けることができます。

ここからは中性代名詞 en (以下単に en と表記します)を細かく見ていきます。

en は文法上の特性から次の3つに大別できます。

en の3つの使い方 1. 前置詞 de + 名詞を置き換える 2. 冠詞/数量表現を伴って名詞を置き換える 3. 成句表現の一部になる

3つありますが、最後のものは動詞ごとに覚える成句表現になるので、実際には上の2つを押さえておけば大丈夫です。

前置詞 de + 名詞を置き換える

すでに出てきた名詞に前置詞の de を付けて置き換える用法です。そのためこの en は de cela などの形で言い換えられます。また「名詞」は名詞句(「~な〇〇」など)や名詞節(「~するということ」など)でもよく、その場の状況など文中に明示されていない事柄の場合もあります。

私の説明ではわかりづらいと思いますので例文を見てみましょう。

Il y avait un bâton à ses pieds. Il en a frappé l’homme dans un moment d’urgent.
足元には棒があった。彼はとっさにそれで男を殴った。

Avez-vous vu le lac au sommet de la montagne ? Les rivières qui en coulent alimentent cette terre. 
山頂の湖を見ましたか? そこから流れる川がこの土地を豊かにしているんです。

上の例文では de + ce bâton という名詞、下の例文では de + ce lac au sommet de la montagne という名詞句がそれぞれ en に置き換えられています。

実際の用例も見てみましょう。

※戦争に関するニュース記事からの引用があります。

Je vous en supplie, ramenez-moi mon bébé en vie.

お願いですから、私の赤ちゃんを生きて返してください。

France 24, Otages du Hamas : “Je vous en supplie, ramenez-moi mon bébé en vie”, 16/10/2023.(参照: 2023/11/01) 訳出・強調は引用者による.

★ supplier A de B … A に B を望む

訳文には出てきませんが ramenez 以下を名詞節的に受けつつ supplier が de を必要とするので en が使われています。en なしで書き換えてみると次のようになります。

Je vous supplie que vous me rameniez mon bébé en vie.

少しわかりにくいですが、supplie と que の間に de ce が省略されていると考えれば de + 名詞節の形です。

※ 一般に文章語では de ce, à ce が省略される傾向にありますが、supplier はそもそも que + 接続法を直後において間接目的語とするので、厳密には文章語における省略とは違うかもしれません。

La mère Buvat soupa avec eux. Ils ne s’en demandèrent pas la raison.

ビュヴァおばさんは彼ら(子どもたち)と一緒に夕食を取った。彼らはその理由を尋ね合うことはしなかった。

Charles-Louis Philippe, 1910, p.27. 訳出・強調・補足は引用者による.

こちらはビュヴァおばさんがいるというその場の状況を en で受け、la raison を修飾しています。やや強引に書き換えてみると、例えば次のように表現できます。

Ils ne se demandèrent pas la raison de sa presence.

Ils ne se demandèrent pas la raison de ce qu’elle était ici.

色々と見てきましたが en が単体で出てきたら、まず疑うべきはこの前置詞 de + 名詞[句・節]です。

またこの en は de + cela として解釈できるので文脈に応じて「その」「それによって」「そこから」などと訳しておけば大丈夫です。

冠詞・数量表現を伴って名詞を置き換える

こちらの用法では、上のものと違い en が置き換えるのは名詞だけです。その代わり、名詞が来るはずだったところに冠詞・数量表現などが残るという特徴があります。ただし具体的な数量を表さない不定冠詞複数形 des と部分冠詞 du, de la, de l’ は省略されます。

まずは簡単な例文から確認しましょう。

Il y a du vin dans le frigidaire, buvez-en à votre guise.
冷蔵庫にワインが入っているから、好きに飲みなさい。

Avez-vous vu un homme avec un chapeau bleu ?
Oui, je l’ai vu, mais il y en avait trois. 
青い帽子の男性を見ませんでしたか?
ええ、見ましたけど、3人いましたよ。

Tu as un élastique ?
Oui, j’en ai beaucoup, je t’en donne un.
ヘアゴム持ってる?
うん、いっぱいあるから1つあげるよ。

1つ目が部分冠詞 du が省略されるパターン、2つ目が数詞が残るパターン、3つ目が数量表現と冠詞が残るパターンになっています。

これらの en は、具体的な数量を明らかにしないまま「それを(その人を)」と言いたいとき、逆に数量の情報を追加しながら「それを(その人を)」と言いたいときに使われます。そのため、他の代名詞と同様に日本語訳には反映されないことが多いです。

では文学作品の引用から実際の使い方を見てみましょう。

Je m’allongeais dans le sable, en prenais une poignée dans ma main, le laissais s’enfuir de mes doigts en un jet jaunâtre et doux, …….

砂浜に寝ころび、砂をつかんで、指のあいだから黄色っぽくやさしいひとすじがこぼれ落ちていくにまかせ、……。

原文: Françoise Sagan, 1954, p.13. 訳文: 河野万里子, 2009, p.11. 強調・省略は引用者による.

ここでは une poignée (一つかみの)という数量表現とともに用いられています。訳文ではむしろ「砂をつかんで」と具体的に示されていますね。

このパターンもそこそこ多いので、前置詞 de + 名詞で解釈できないときはこちらを試してみてください!

成句表現の一部になる

最後にご紹介するのが、この en を使った成句表現です。ここではいくつか重要な動詞を含むものをピックアップしておきます。
※詳しくはお手持ちの辞書などで当該の動詞を引いてみてください。

en appeler à …… ~に訴える

en avoir pour + 数量 …… ~かかる/~続く

en croire …… を信用する

en être …… まで来ている

en finir …… けりをつける

en venir à …… ついに~する

en vouloir à …… を恨む, を狙う

s’en aller …… 立ち去る, 消え去る

s’en faire …… 心配する

s’en prendre à …… を非難する

n’en pouvoir plus …… もうダメである

では例文で確認してみましょう。

Ce n’est pas ta fault qu’elle s’en est allée. Ne t’en veux pas trop.
彼女がいなくなったのは君のせいじゃない。あまり自分を責めないで。

Y a-t-il des embouteillages ?
Oui, ils disent qu’il y en a pour les 10 prochains kilomètres.
渋滞してるの?
ああ、この先10キロは続くらしい。

実際の用例も載せておきます。

Si l’on en croit Bergson, l’intuition présente de la durée arrache l’âme humaine à l’obsession du temps.

ベルクソンの言葉を信じるならば、持続の意識的直観によって人間の心は時間に対する強迫観念から引き離される。

Walter Benjamin, 1923=1990?, ≪ Sur quelques thèmes baudelairiens ≫. 訳出・強調は引用者による.
資料の都合上、仏語訳出版年は定かではありません。

★ ここでの présent は注意深いの意味と思われます。

● arracher A à B AをBから奪う

このように成句表現の一部になる en は知っていれば簡単に理解できますが、正面から解釈しようとするとうまくいきません。これまでの2つでは訳せない en に出会った場合は、一度辞書を引いてみるとわかるかもしれません。

中性代名詞 en の注意点

ここまで en の使い方を解説してきましたが、いくつか注意点がありますので記載しておきます。

en は男性単数として扱う

中性代名詞とは言うもののフランス語に中性はありませんので、代わりに男性単数形として扱います。

Parmi plusieurs options, il en a choisi une.
いくつもの選択肢の中から、彼は一つを選んだ。

ここで en は plusieurs options という女性複数名詞を受けていますが、en は常に男性単数として扱うので choisi もそれに従います。

※近年ではフランス語の文法性についてもフェミニズム的視点から批判がなされていますので、将来的には en を男性単数として扱うというルールも変わるかもしれません(?)

en は他の代名詞よりも後ろに置く

en は動詞の直前に置くというルールは、後述する肯定命令文以外では絶対です。そのため他の人称代名詞、中性代名詞よりもあとに来ます。

Il avait vécu plusieurs péripéties et il m’en a raconté une.
彼はいろいろな波乱を経験していて、そのうちの1つを私に話してくれた。

Je m’en souviens à l’instant. 今思い出した。

Pas de problèmes ? 問題はない?
Non, il y en a beaucoup. いや、たくさんあるよ。

Ne lui en parlez pas. 彼女にその話をしないで。

1つ目は間接目的語、2つ目は再帰代名詞、3つ目は中性代名詞、4つ目は否定命令文の例です。

肯定命令文で en を使う場合

肯定命令文では動詞だけが先頭に移動し en は元の位置に残ります。その際、通常の語順ではないことを表すために単語の間に – (ハイフン[トレデュニオン]) を付けます。

Vous avez deux livres identiques, prêtez-m’en un.
同じ本が2冊あるなら、1冊貸してください。

Avez-vous encore du thé ? Servez-lui-en aussi une tasse.
お茶はまだある? 彼にも1ぱい差し上げて。

また二人称単数(tu)に対する肯定命令文では、もともと活用語尾の -s が脱落する動詞(-er動詞, -ouvrir型動詞など)の場合も、語調を整えるために(?) -s を復活させます。

As-tu menti ? Parles-en honnêtement. 嘘をついたの? 正直に話して。

中性代名詞 en の使い方まとめ

お疲れさまでした!

最後に中性代名詞の en の使い方についてまとめておきます。

中性代名詞 en は動詞の前に置かれる

まずは前置詞 de + 名詞、次にそれ(その人)をで考える

解釈が難しい場合は成句表現を疑う

中性代名詞の en は何となくで読んでしまうことも多いですが、しっかりした解釈が必要な場合には文の構造から丁寧に見ていくとうまくいくかと思います!

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参考文献

Charles-Louis PHILIPPE, Dans la petite ville, LE PETIT FRÈRE, Bibliothèque Charpentier, 1910. (Bibliothèque nationale de France, 2007)
URL: Dans la petite ville / Charles-Louis Philippe | Gallica (bnf.fr) (参照: 2023/11/28)

Boursorama, Les loisirs, un droit “essentiel” des enfants, rappelle la Défenseure des droits, 2023.
URL: https://www.boursorama.com/actualite-economique/actualites/les-loisirs-un-droit-essentiel-des-enfants-rappelle-la-defenseure-des-droits (参照: 2023/12/04)

France 24, Otages du Hamas : “Je vous en supplie, ramenez-moi mon bébé en vie”, 2023.
URL: https://www.france24.com/fr/moyen-orient/20231016 (参照: 2023/11/28)

Françoise Sagan, Bonjour Tristesse, Éditions Julliard, 1954.

Walter Benjamin, Charles Baudelaire, 1923. (Charles Baudelaire : un poète lyrique à l’apogée du capitalisme, Payot, 1990.)
※資料の都合上、仏語訳のタイトル、出版社、出版年に誤りがある可能性があります。

倉方秀憲, 『新システマティックフランス語文法』, 早美出版社, 2014.

倉方秀憲, 東郷雄二, 春木仁孝, 大木充, 倉方健作, 『プチ・ロワイヤル仏和辞典 [第5版]』, 旺文社, 2020.

フランソワーズ・サガン, 河野万里子訳, 『悲しみよ こんにちは』, 新潮文庫, 2009.

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