【主張ではないことを表す】接続法の用法まとめ

文法

接続法の説明として、話し手が事実だと思っていないこと事実かどうかを問題としないことを表すというものがよくあります。

確かにこれらのイメージはとても重要ですが、それだけでは理解しきれないのも事実です。

今回は最近発表された日本フランス語学会の渡邊淳也さん、佐多明理さんによる論文「フランス語の接続法とポリフォニー」(2021)を踏まえた上で、私なりに接続法について解説できればと思います。

接続法の基本:節と活用

初めに接続法の基本事項を確認しておきます。

※ こちらのボタンから接続法の用法解説に飛べます。

接続法は主に従属節で用いる

接続法はフランス語で subjonctif と言い、「従属した(sub)接合の(jonctif)」といった意味です。その名の通り、基本的には ~ que に続く文の中(=従属節)で用いられます。

Je suis heureuse que tu sois là. 来てくれて嬉しいよ。

先に例を挙げてしまいましたが、上記の sois が être の接続法です。

ただし従属節ではいつも接続法を使うというわけではなく、接続法を要求する表現はある程度決まっています。この点については後で詳しく扱いたいと思います。

接続法の活用

接続法には大きく現在半過去の時制があり、それぞれ複合時制(過去大過去)を取ることができます。ただし日常会話では完了していないことは現在、完了したことは過去を用いて表し、半過去と大過去は一部の表現を除いて使いません。

そのためここでは現在と過去の活用について軽く触れておきます。
※ 半過去・大過去を含めた詳しい活用については別記事でまとめたいと思います。

接続法現在の語幹

単数(je, tu, il)と三人称複数(ils)では、直説法現在の三人称複数(ils)の語幹になります。

一人称複数(nous)と二人称複数(vous)では、直説法現在の一人称複数(nous)の語幹になります。

ただし faire (fass-), pouvoir (puiss-), être (soi- / soy-), avoir (ai- / ay-) など例外もあります。

接続法現在の語尾

単数(je, tu, il)と三人称複数(ils)では、直説法現在の -er 動詞の語尾(-e, -es, -e, …, -ent)になります。

一人称複数と(nous)と二人称複数(vous)では、直説法半過去の語尾(-ions, -iez)になります。

ただし être (-s, -s, -t, -ons, -ez, -ent), avoir (-e, -es, -t, -ons, -ez, -ent) は例外です。

接続法現在の活用例

言葉だけではわかりづらいので、manger, faire, être を例に実際の活用を載せておきます。

manger
je mangenous mangions
tu mangesvous mangiez
il mangeils mangent
faire
je fassenous fassions
tu fassesvous fassiez
il fasseils fassent
être
je soisnous soyons
tu soisvous soyez
il soitils soient

接続法過去の活用

接続法過去は複合時制なので、助動詞(être, avoir)の接続法現在形 + 過去分詞で作ることができます。

venir と voir を例に活用を見てみましょう。

être venu
je sois venu(e)nous soyons venu(e)s
tu sois venu(e)vous soyez venu(es)
il soit venuils soient venus
avoir vu
j’aie vunous ayons vu
tu aies vuvous ayez vu
il ait vuils aient vu

ほかの複合時制と同じく、être を助動詞に取る場合は性数一致をすることに注意です。

接続法のコアイメージは「私の主張」からの分離

先にご紹介した論文を勝手にかみ砕いて解釈すれば、接続法は自分の主張とは切り離して物事を述べる表現と言ってもよいかと思います。

例えば個人の感想主観的な判断・想像、あるいは他者から聞いた話ある集団の中で広く知られていることなど、接続法を用いて表現することで主張と区別することができます。

※ 論文では専門的な用語を用いて詳しく解説してくださっています。例文も多く、言語論などに明るくない私でもおおよそ理解できましたので、ご興味あればぜひご覧ください。
渡邊淳也, 佐多明理(2021), 「フランス語の接続法とポリフォニー」(参照:2023/12/29)

論文中でも引用されている例文を見てみましょう。

Je comprends que Paul est mécontent. ポールが不満なのは理解している。

Je comprends que Paul soit mécontent. ポールが不満なのも理解できる。

上の文では直説法が用いられているため「ポールが不満である」ということも話者である「私」が断言する形です。一方、下の文では接続法が用いられているため「ポールが不満である」ということはあくまでも「私」が様々な状況から頭の中で判断したことに過ぎません。

ここからは、これらのイメージをもとに接続法を使用する場面を大きく3つに分類してご説明したいと思います。
※ 解説の都合上、論文の内容とはそこそこの乖離があります。

頭の中で考えていることを表す

頭の中で思い描いていることや、記憶をたどったり状況を考えたりした結果を表す接続法です。

未来の出来事を表す接続法

J’attends que la pluie s’arrête. 私は雨が止むのを待ちます。

「雨が止む」ことは私が頭の中で想像する未来であり、そのことを主張しているわけではありません。

目的を表す接続法

Il parlait lentement pour que les gens l’entendent bien. 彼は民衆が聞き取りやすいようにゆっくりと話した。

「民衆が聞き取りやすい」ことは彼(または話者)が頭の中で想像する事態であり、それが主張ではありません。

この場合は、後述するある相手・集団の中で共有された内容を表す接続法とも捉えられます。その場合、「ゆっくりと話す」ことは「聞き取りやすい」ことであるという前提が共有されていると言えます。

願望・要求を表す接続法

Elle a souhaité que sa grand-mère se rétablisse rapidement. 彼女は祖母が早く回復することを望んだ。

Que le monde soit en paix. 世界が平和でありますように。

上の例文の「祖母が早く回復する」ことは彼女が頭の中で望む未来であり、彼女がそうなると主張しているわけではありません。

また下の例文のように、願望・要求を表す動詞を省略して独立節で接続法を用いる(= Que 以下のみ)場合でも同じことが言えます。

※ 独立節で用いる接続法については後述します。

最上級表現に続く関係節で用いる接続法

Je pense que c’est le mieux que nous puissions faire. これが私たちの取り得る最善の方法だと思います。

「私たちが取り得る」最善の方法は私が頭の中で状況を判断した結果であり、それが絶対に正しいと主張しているわけではありません。

探求・願望表現に続く関係節で用いる接続法

Je cherche quelqu’un qui puisse m’aider dans cette tâche. この仕事を手伝ってくれる人を探しています。

Je cherche la personne qui m’a aidé ce jour-là. あの日私を助けてくれた人を探しています。

上の例文では接続法が使われているので「この仕事を手伝ってくれる」人は私が頭の中で想像する人物であり、そういう人がいるかどうかを主張しているわけではありません。

一方、下の例文では直説法が用いられ「あの日私を助けてくれた」人が存在することもあわせて断定しています。

唯一性の表現に続く関係節で用いる接続法

C’est la seule option que je puisse suggérer. これが私が提案できる唯一の選択肢です。

Le Mont blanc est le seul gâteau qu’elle n’aime pas. モンブランは彼女が唯一嫌いなケーキです。

上の例文は接続法が使われており、「私が提案できる」選択肢は私が頭の中で考えた結果であって絶対にそれしかないと主張しているわけではありません。

一方、下の例文では直説法が使われており、「彼女が嫌いな」ケーキであることも主張の対象となっています。

否定的に考えていることを表す

そうではないと思っていることそうではないと思いたいことを表す接続法です。

懐疑を表す接続法

Je ne crois pas qu’il soit parti seul. 私は彼が一人で帰ったとは思えません。

Croyez-vous qu’il soit parti seul ? 彼が一人で帰ったとお思いですか?

否定文、疑問文のいずれも話者である私は「彼が一人で帰った」とは思っていないことを意味します。

頻度を表す接続法

Il est rare qu’il y ait des pluies dans la région. その地域では雨は珍しい。

「その地域での雨」はほとんどないことであり、信じがたいという気持ちが表れています。

望ましくない内容を表す接続法

Il est dommage que Lucey ne puisse pas venir. リュシーが来られないのは残念だ。

J’ai peur que mon enfant tombe. 私は子どもが転ぶのではないかと心配です。

「リュシーが来られない」こと、「子どもが転ぶ」ことが望ましくない事実・未来であることを表しています。

ある相手・集団の中で共有されていることを表す

相手や第三者の発言、またはすでに周知の事実であることを表します。

相手の発言を表す接続法

Que pensez-vous de l’allégation indiquant que vous avez reçu de l’argent illégalement ?
─ Je ne sais pas qu’il y ait eu de telle allégation.

不正に金銭を受け取ったという疑惑についてどうお考えですか?
私はそのような疑惑があるとは存じておりません。

「そのような疑惑がある」ことは相手の発言で知ったことであり、話者の主張ではないことを示しています。

たいていの場合、相手の発言を表す接続法はすでに挙げた否定的に考えていることを表す接続法としても理解できます。

第三者の発言を表す接続法

Il veut que nous apprenions plus de français. 彼は私たちにもっとフランス語を学ぶように言っている。

「私たちがもっとフランス語を学ぶべきだ」ということが第三者の主張であり、話者の主張ではないことを表しています。

論文ではより形式化して「個人をさす三人称主語+思考動詞+que 接続法」(p.11)の形をこのパターンとして分類しています。

前提となる事実を表す接続法

Cela expliquerait qu’elle soit venue ici. それなら彼女がここに来たことも説明がつく。

Sa mère est fière qu’elle soit chanteuse. 彼女の母親は彼女が歌手であることを誇りに思っている。

「彼女がここに来た」こと、「彼女が歌手である」ことは話者の判断や感情の前提となる事実です。

特に下の例文のように「~であることを〇〇と思う/感じる」の形は接続法を要求する場合が多いです。情報が前提として共有されていない場合もありますが、そちらは頭の中で考えていることを表す接続法として解釈できるかと思います。

前提となる信念をもとにした接続法

Pensez-vous que l’argenterie permette d’éloigner le mal ? 銀食器が魔を払ってくれると思っているのですか。

Il ne sait pas où se trouve Paris, bien qu’il soit Français. 彼はフランス人なのにパリがどこにあるのか知らない。

上の例文では「銀食器が魔を払ってくれる」ことが共有された概念であることを表しています。ただしこの用法は懐疑を表す接続法と考えることもできます。

下の例文は少し用法が違っていて、「彼がフランス人である」ことというよりも「フランス人ならばパリがどこにあるのか知っている」という前提となる信念に基づいています。(このような用法は「譲歩」として知られており、論文でもp.10で取り上げられています。)

その他の接続法に関する文法事項

ここからは少し細かい文法事項について、大まかに触れておきたいと思います。

ここで取り上げるのは「独立節で用いる接続法」「前置された補足節で用いられる接続法」「条件法現在・過去第2形」「虚辞のne」の4点です。

独立節で用いる接続法

接続法は一般に従属節で用いると言いましたが、主節を省いて独立節で用いられる場合もあります。

願望・命令・要求を表す

Qu’il repose en paix. 彼が安らかに眠れますように。

Que Serge reste ! セルジュは残るように。

いずれも「~するように願う/命じる」が省略されています。

特に下の例文のように命令を表す用法は、三人称に対する命令文として説明されることもあります。

慣用表現

上記の表現と構造は同じですが、慣用表現として確立されているものもあります。

(Que) Dieu vous bénisse ! 神の恵みを。

Que je sache, il n’est pas comme ça. 私の知る限り、彼はそんな人ではありません。

Vive Sa Majesté le roi ! 国王陛下万歳!

1つ目は誰かがくしゃみをしたときや幸運を祈る場合に用いられる表現です。英語で言うと (God) bless you. に相当するものと思われます。類似表現に À tes[vos] souhaits ! があります。

2つ目は que S savoirの接続法 という形で「Sが知る限りでは」を意味します。que の前に autantpour autant が付く場合もあり、文末に置くこともできます。

3つ目は有名な「~万歳」を表す言い方で、主語と動詞が倒置されています。主語が複数の場合には Vivent となることもありますが、多くはそのまま Vive を使います。

接続法を用いた慣用表現はこのほかにもまだまだありますが、そちらはまたの機会にしたいと思います。

前置された補足節で用いられる接続法

Qu’il se soit impliqué dans cette affaire, c’est clair. 彼がこの件に関与していたことは明らかだ。

結論、主張を後回しにして述べる言い方です。そのため主節が clair(明らかだ) のように断定的であっても、補足節の段階では断定を控えるために接続法を用います。

条件法現在・過去第2形

接続法半過去・大過去は、書き言葉において時制の一致が起こる場合に用いられる表現ですが、条件法の代わりに用いることもできます。それらを順に条件法現在第2形・条件法過去第2形と言います。

さらに条件節の条件法の代わりになるだけでなく、帰結節の直説法半過去・大過去を置き換えることもできます。

現代では珍しくなってきていますが、書き言葉であればたまに見かけますし、少し時代を遡るとかなり出てくるので押さえておくと良いと思います。

例文で使い方を確認しましょう。

Mandeville a bien senti qu’avec toute leur morale les hommes n’eussent jamais été que des monstres, si la nature ne leur eût donné la pitié à l’appui de la raison:

マンデヴィルは、たとえ人間があらゆる道徳を備えていたとしても、自然が理性の裏付けとしての同情を彼らに与えていなければ、人間は怪物以外の何物でもなかっただろうと感じていた。

Jean-Jacques Rousseau, 1755, pdf: p.30. 強調は引用者による.

★ à l’appui de … の裏付けとして

ここでは条件節と帰結節の両方で接続法大過去が使われています。大過去になっているのは時制の一致によります。(ちなみに接続法半過去の例は私もまだ見たことがないです・・・)

ただし fût-ce (たとえ~であっても)ne fût-ce que (たとえ~に過ぎなくとも)といった慣用表現では条件法現在第2形も用いられます。

この言い回しが日常的にも使われるのかについては正直よくわかっていませんが、Projet Voltaire というサイトには soutenu (高尚な)と書いてありました。単純な条件法現在を用いて serait-ce, ne serait-ce que とするか、そもそも倒置をやめて même si c’était, même si ce n’était queといった感じにするのが無難なようです。

※ 詳しくはまた条件法を扱う際に解説できればと思っています。

虚辞の ne

接続法に限らずですが、動詞の前に ne が単独で置かれる場合があります。これは否定的な考えの現れなどとして添えられるもので、否定の意味を持たずほとんど書き言葉でしか使われません。これを文法用語では虚辞(きょじ)の ne (ne explétif) と言います。

実際の用例を見てみましょう。

Les mains d’Anne relevèrent mon visage, je serrais les paupières de peur qu’elle ne vît mon regard.

アンヌの両手が、わたしの顔を上向ける。わたしは視線を合わせるのが怖くて、きつくまぶたを閉じる。

原文:Françoise Sagan, 1954, p.84. 訳文: 河野万里子, 2009, p.119. 強調は引用者による.

★ serrer … をぎゅっと閉じる
● vît … voir の接続法半過去三人称単数形

原文では ≪ qu’elle ne vît mon regard ≫ と ne が入っていますが、日本語訳では「視線を合わせるのが怖くて」と「ない」の意味は訳出されていません

これまで述べてきたように、接続法には否定的な考えを表す用法がありますので、この虚辞の ne と相性が良いと言うことになります。

ただし pouvoir や savoir などの一部の動詞は ne 単独で否定の意味を表すことができ、この場合は虚辞の ne とは異なります。

Il est regrettable qu’il ne puisse venir. 彼が来られないのは残念です。

これは書き言葉における pas の省略によるもので、訳す際にも否定の意味を出す必要があります。

接続法の用法まとめ

お疲れさまでした!

だいぶ長々と書いてしまいましたので、最後に要点を整理しておきます。

接続法は主張ではないことを表す

一般に日常会話では接続法現在・過去のみを用いる

文語では接続法半過去・大過去も使われ、条件法の代わりにもなる

覚えることは多いですが、接続法を理解することでフランス語の世界が大きく広がるかと思います。ぜひ色々な場面でどのように接続法が使われているのか、注目してみてください!

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参考文献

Françoise Sagan, Bonjour Tristesse, Éditions Julliard, 1954.

Jean-Jacques Rousseau, Discours sur l’origine et les fondements de l’inégalité parmi les hommes, PDF版, 1755=2012.
URL: https://www.rousseauonline.ch/pdf/rousseauonline-0002.pdf (参照:2024/1/8)

PROJET Voltaire, « fut » ou « fût » ? « fut-ce » ou « fût-ce » ?.
URL: https://www.projet-voltaire.fr/regles-orthographe/fut-ce-ou-fut-ce/ (参照:2024/1/8)

倉方秀憲, 『新システマティックフランス語文法』, 早美出版社, 2014.

倉方秀憲, 東郷雄二, 春木仁孝, 大木充, 倉方健作, 『プチ・ロワイヤル仏和辞典 [第5版]』, 旺文社, 2020.

渡邊淳也, 佐多明理, 「フランス語の接続法とポリフォニー」, 日本フランス語学会第 334 回例会, 2021.
URL: https://www.sjlf.org/wp-content/uploads/2020/12.pdf (参照:2024/1/8)

フランソワーズ・サガン, 河野万里子訳, 『悲しみよ こんにちは』, 新潮文庫, 2009.

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